2009/08/19

懺悔と救済

物が売れないはずの8月だというのに我が社はなぜか忙しく、昨夜は入社以来最長の残業時間を更新した。
日付が変わる頃に電車に乗り込み、客もまばらな座席に座ってぼんやりしていると、途中の駅でおじさんがよたよたと乗ってきた。
おじさんというよりおじいさんに近いその人は、呑んできたのか寝不足なのか、とにかく今にも倒れ込みそうなくらいふらふらしている。
しまいには眼鏡を外して座席に横たわり眠り込んでしまった。
この時間、各駅停車は車庫止まりなので、終点でおじさんがちゃんと起きられるかどうか心配になってきた。おじさんだけでなくおじさんの眼鏡も心配になった。
こんなに泥酔していては外した眼鏡のことなんて気づかずに降りてしまうだろう。教えてあげた方が親切かしら。でも、あなたも眠いけど私も眠いのよ。きっと駅員さんが気づいてくれるよね、うんうん。
などと思っいながらウトウトしているうちに終点に着いたので、一刻も早く帰りたかった私はそそくさと席を立ってエスカレーターへ向かった。
ふと気になって振り返ると、おじさんが駅員さんが起こす前に自力で立ち上がって車両から出てきたのが見えた。
そして予想通り、眼鏡は座席の上に忘れ去られたままになっている。

おじさぁぁぁーん!!

教えてあげたかったけどエスカレーターはみるみる改札階に到着し、後ろ髪を引かれながら家路に向かった。
道々「やっぱり教えてあげれば良かった。眼鏡人が眼鏡のない生活をするのは大変だ。申し訳ないことをした」と悔やんでしまい、こんな些細なことで悔やむようだからいつも小さな悩み事で頭の中がいっぱいになるのだと、また悩みはじめた。

ふと、私の前を歩く人がハンカチを落とした。
とっさに拾って声をかけたら、真夜中だったのでものすごく驚かれたが、笑顔で受け取ってくれた。

なんだか救われた気がした。

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